某古書店にて
藤枝静男という作家のことは、岸本佐知子さんのエッセイ集『気になる部分』(白水社)で知った。
藤枝静男という作家のことを、無知な私はついぞ最近まで知らなかった。私の訳した者を好きだと言ってくれる、私よりずっと若い、そして私よりずっと本読みのひとから話を聞いて、ちょうどタイミングよく文庫化されたものを(中略)読んだのだった。もしもグイ呑みと丼鉢と抹茶茶碗と弥勒菩薩が一人称で語る小説というものがこの世に存在するともっと早くにわかっていれば、何をさしおいてでも手に取っていただろう。とにかくすごい世界。猥雑にして清浄。極小かつ無辺。究極のビザール。この人のものは全部読みたいと思った。(182)
気になる部分
岸本 佐知子
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